バイヤーイネーブルメントとは何か、セールスイネーブルメントとの違いも含めて概要を解説する記事です。バイヤーイネーブルメントの定義、注目の背景、実施するメリット、そして実践方法について分かりやすく解説します。
インターネットが普及した現在、企業の購買担当者を含めた消費者は自分自身で情報収集に取り組み、より自律的に購買の判断を行えるようになりました。こうした状況下で注目されるようになったのが、この主体的な顧客行動に寄り添うような仕方で展開する営業手法「バイヤーイネーブルメント」です。
本記事では、バイヤーイネーブルメントの定義や注目の背景、メリット、実践方法について分かりやすく解説します。
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バイヤーイネーブルメントとは
バイヤーイネーブルメントは、2018年頃に登場した比較的新しいビジネス用語です。以下では、その定義や注目の背景、そしてセールスイネーブルメントとの違いを解説します。
定義
英語の意味から言えば、「バイヤー(buyer)」とは買い手、「イネーブルメント(Enablement)」とはある人が目的を達成できるように必要なものを提供することを意味します。ここから転じて、バイヤーイネーブルメントとは、取引先企業の購買担当者が購買の意思決定を行う際に必要な情報やツールを提供し、購買プロセスを主体的かつスムーズに進められるようにサポートすることを指します。
ここで提供する情報としては、自社の商品・サービスに関する詳細な情報はもちろん、顧客の導入事例、FAQ、さらには競合他社の商品と比較したガイドまでを含みます。顧客の主体的な購買行動がより良いものになるようにサポートすることを通して顧客との関係を自然に強化し、結果として自社商品を選んでもらえるように誘導するのが基本的な狙いです。
実践するためには、データドリブンな施策実行が必要です。データに基づいた営業戦略で、効果的なターゲティングやパーソナライズを実現します。これにより、営業効率が向上し、成約率が上がります。実践方法には、顧客データの収集・分析、適切なKPIの設定、そしてデータに基づくアクションプランの実行が含まれます。これらを活用することで、競争優位を確立できます。
参考記事:データドリブンセールスとは?メリットと実践方法を解説
注目される背景
この営業手法が注目されるようになった背景には、インターネットの普及によって顧客行動が変化したことが関係しています。特に、企業の購買担当者に増えつつあるミレニアル世代(1981~1990年頃に生まれた世代)は、若い頃からインターネットに慣れ親しんでおり、購買活動においても自らオンラインで情報収集して意思決定することを好む傾向があります。こうした顧客に対しては、従来通り直接訪問して営業活動をしても、それほど大きな効果は期待できません。そこで、オンラインを通して顧客の自律的な購買活動がスムーズにいくようにサポートしつつ、その中で顧客と関係を築き、結果として自社商品を選んでもらえることを目指す重要性が認識されるようになりました。
セールスイネーブルメントとの違い
セールスイネーブルメントとは、主に営業チームのパフォーマンス向上を目的とし、営業担当者が効果的に営業活動を行えるようにするための支援を意味します。具体的には、効果的なトレーニングやツール、営業戦略などを提供して営業担当者を支援することにより、顧客の購買決定を促進することを目指します。一方、バイヤーイネーブルメントは先述の通り、営業担当者の営業活動ではなく、顧客の購買プロセスそのものを支援することに焦点を当てているのが主な違いです。
バイヤーイネーブルメントの3つのメリット
バイヤーイネーブルメントは、営業力や顧客満足度を向上させると共に、それらの効果に高い再現性を確保することを実現します。
営業力の向上
企業の購買活動においては、購買の最終判断が会議や稟議を通して行われることは珍しくありません。このような状況下では、買い手側である購買担当者も上役などに「なぜこの商品を選んだのか」合理的な説明をすることが必要です。この点、バイヤーイネーブルメントの実施は、購買担当者に会議や稟議で自分の意見を通すための説得材料を与えることになります。営業担当者に押し売りされたのではなく、自分で十分に検討を重ねて購買を決めたという事実は、購買担当者の主張に説得力と力強さを与えることになるでしょう。つまり、顧客の情報収集を助けることにより、間接的に自社の営業力を強化できます。
顧客満足度の向上
顧客満足度の向上も大きなメリットです。先述の通り、現代の顧客は「自分で納得できるまで情報収集や比較検討をした上で購買の判断がしたい」というニーズを抱えています。しかし、その一方でこの情報収集には多くの時間と労力が必要です。そのため、購買活動をサポートすることは、顧客側にとっても大きなメリットとなります。顧客が必要とする情報や支援を適宜提供することで、顧客満足度を向上させ、顧客と長期的な信頼関係を築けます。
営業活動に再現性が生まれる
バイヤーイネーブルメントは、顧客の購買プロセスを詳細に理解し、これに基づいて情報を提供します。その実践に当たっては、営業チーム全体が統一された方法論やツールを使用します。その結果、カスタマージャーニーの各段階において、顧客へどのようなアプローチが効果的なのか組織として洞察を深め、誰が担当者を務めても一貫した方法で顧客対応を行えるようになります。
以上から、バイヤーイネーブルメントを実践するとメリットがあると考えています。実践するためには「セールスイネーブルメントツール」を用いることで、継続的に優れた営業成果を出し続けられるような営業チームをつくることが出来ます。次の記事では、営業チームの効率を最大化することができた、企業の導入事例を紹介しています。どのように施策を講じ、成果を出したのか、その具体例をぜひ確認してください。
バイヤーイネーブルメントの実践方法
バイヤーイネーブルメントを実践するためには、顧客目線で購買プロセスやニーズを改めて洞察し、顧客の情報収集や購買の判断をスムーズにするために必要なものを明確化した上で、具体的なアクションへ結びつけることが重要です。
顧客のニーズと購買プロセスを理解する
顧客の購買活動を適切にサポートするためには、顧客のニーズや購買プロセスへの理解を深めることが必要です。そのためには、顧客のペルソナを具体化し、カスタマージャーニーの各段階において顧客がどのような行動を取るか、どのようなサポートや情報を必要としているか、ニーズを理解するように努めなければいけません。
この際に注意すべきなのは、企業においては購買の判断に関わるのは一人とは限らないということです。そのため、ペルソナの作成に当たっては、商品の導入を主導するバイヤー(チャンピオン)を中心にしつつも、いくつかのペルソナとそのニーズを検討する必要があります。
顧客のニーズや購買プロセスを理解するために「カスタマーパス」を作成する
顧客のニーズや購買プロセスへの理解を深める方法として、弊社ではカスタマーパスの作成をおすすめしています。
カスタマーパスとは、顧客が自社サービス等を購入するまでの意思決定プロセスを言語化したもので、顧客目線で作成します。カスタマーパスを整理することによって、顧客がどのような意思決定をしてサービス等を購入するのか分かるようになり、営業が注力すべきプロセスや案件を進めるにあたって必要なアクションを明確にすることができます。
なお、カスタマーパスは業界や商材等によって異なりますので、自社の顧客に合わせて考える必要があります。
▲カスタマーパスのイメージ図
顧客が購入のプロセスを進めるのに必要な要素を洗い出す
顧客がスムーズに購入プロセスを進めるためには、営業担当者が適宜必要な情報やサポートを提供することが重要です。たとえば提供すべき代表的な情報としては、詳細な製品情報、比較資料、ケーススタディなどが挙げられます。また、購買担当者が商品の導入を稟議などで通しやすいように、自社商品に関する説得力のある導入起案書のテンプレートを用意したり、導入時の費用対効果を試算できるツールを提供したりするのもおすすめです。
顧客が購入プロセスを進めるために営業が行うアクションを特定する
バイヤーイネーブルメントにおいて、購買活動は顧客が主導する形になりますが、営業担当者は何もしないでよいというわけではありません。前段までの顧客分析に照らして、カスタマージャーニーの各段階で顧客が行わなければいけない作業を洗い出し、問題や手間が生じがちな部分に関してどのようなアクションをしたらいいか特定しましょう。顧客の抱える問題や疑問に対してタイミングよく応えられるようにすることで、顧客と信頼関係を築くことも可能です。
▲カスタマーパスの各フェーズで営業が行うべきアクションの例
詳しいカスタマーパスの作成手順や営業が行うべきアクションの決定方法については以下のページで説明していますので、ご覧ください。
参考記事
受注率を向上させるカスタマーパスとは?言葉の定義と設計方法を徹底解説! part1
受注率を向上させるカスタマーパスとは?言葉の定義と設計方法を徹底解説! part2
受注率を向上させるカスタマーパスとは?言葉の定義と設計方法を徹底解説! part3
バイヤーイネーブルメントに役立つツール
バイヤーイネーブルメントを実施するためにはツールの活用が欠かせません。そこで、バイヤーイネーブルメントに役立つツールを代3つご紹介します。
顧客管理システム
顧客管理システムは顧客情報を中心に集約し、顧客と良好な関係を構築・維持するためのツールです。各顧客の基本情報をはじめ、取引履歴(購買履歴)や問い合わせ履歴など、顧客に関するあらゆる情報を一元管理できます。さらに、顧客管理システムに入力した情報をリアルタイムで分析することで、顧客一人一人に最適なアプローチを行えるようになります。その結果、受注に繋がったり、顧客満足度を向上させることができます。
デジタルセールスルーム
デジタルセールスルームは、営業活動をデジタル上で完結できるプラットフォームです。顧客にパーソナライズされた専用ポータルを作成し、営業担当者と顧客が双方向コミュニケーションをとりながらデジタル空間で商談を進めることができます。検討から成約に至る一連の購買行動を一元管理し、その行動データを営業分析やアクションプランの策定に活用できます。また、営業支援ツールとの連携で効率的に営業データを収集・蓄積できる点もメリットのひとつです。
資料作成ツール
資料作成ツールとは、ビジネス文書、プレゼンテーション、レポート、マーケティング資料などの各種資料を作成するためのソフトウェアやプラットフォームを指します。効率的に美しく、プロフェッショナルな資料を作成するための豊富なテンプレート、デザイン要素、編集機能を提供します。これらのツールを駆使することによって、コア業務およびノンコア業務を効率化することができます。
参考記事
【2024】セールスイネーブルメントツールおすすめ10選比較
営業分析とは?営業分析の手法とすぐに役立つフレームワーク5選
まとめ
バイヤーイネーブルメントとは、顧客が購買プロセスを自立的に進められるようにサポートすることです。この取り組みを通して、顧客との信頼関係を構築し、営業力の強化や顧客満足度の向上を実現できます。ただし、これらの効果を最大化するためには、顧客の購買プロセスやニーズを分析し、必要な情報やサポートをタイミングよく提供することが重要です。
そこで、営業を支援してくれるツールを使用することで、効率的な営業活動にシフトさせることが重要です。例えば、CRMツールと呼ばれる顧客関係を管理出来るツールを運用することで、顧客関係管理を簡素化し、営業プロセスを最適化します。これらのツールの価格帯は、基本的な無料プランから高度な機能を備えた有料プランまで幅広く提供されており、企業の規模やニーズに合わせて選ぶことが重要です。営業支援ツールの導入は初めての方でも簡単に行えます。以下の記事を参考に、営業支援ツールの導入も検討しましょう。
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