KPI(Key Performance Indicators)は、ビジネスの成長や改善において、重要な指標になります。組織のパフォーマンスを定量化するためには、KPIは不可欠な存在であり、組織の成長に重要な情報を提供します。
この連載記事では、KPIについて解説し、KPIの基本から効果的なKPIの設計方法と分析、そして様々な部門におけるKPIの設定例まで、一挙にKPIについての包括的な情報をお届けします。
その中で今回の章は、KPIを効果的に設定できていない組織に見受けられる課題を紐解き、効果的なKPIの設定方法を紹介することで、再現性のある営業組織を作りあげる助けとなることを目的としています。
ぜひ、ご一読ください。
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KPIとは
KPIとは、Key Performance Indicatorの略であり、組織のパフォーマンスを測定するための重要な指標です。また、KPIは目標設定や戦略策定、業績評価、改善活動などに利用され、一般的に売上高や利益率、顧客満足度など、企業や組織の業績を測るための数値が含まれます。
KPIが果たす役割について
KPIは、組織の中でどんな役目を果たすのでしょうか。改めて、KPIの役割について確認しましょう。
目標達成までの進捗の可視化
進捗状況を定期的に測定し、グラフや数字で表現することで、営業組織の活動が 健全かが確認可能になる
目標達成に寄与できるまでの行動を明確にする
顧客が購入に至るまでの営業活動でどんな行動が必要になるかが明確になり、チーム全員がその目標に向けて動き出すことができる
目標達成に必要な行動量を明確化する
KPIを設定することで必要な行動量が計測され、目標達成に向けた具体的な行動プランを立てることができる
KPIが普段から当たり前のように使用されていることから、単なる数値を管理するものとして使用されているケースは少なくありません。本来の役割をおさえ、KPIの形骸化を防ぎましょう。
チェックリスト
KPIを立てるうえでのチェックリストについてを記載します。社内のKPIと比較を行い確認しましょう。
①計測可能である
②営業がコントロール可能である
③KGIを達成するために効果的である
KPIを適切に設定できていない組織がぶつかる壁
ここからはKPIを適切に設定できていない組織が直面する障壁についてを解説していきます。KPIを適切に設定できていない組織が持つ課題は大きく以下の3つに分けられます。
KPIが正しく計測できていない
まず一つ目に、KPIが正しく計測できていないという課題です。この課題が生じる理由としては、KPIに定量的に観測できないものが含まれていることがあげられます。顧客満足度、サービス品質といった数値化が困難な指標は、社内で明確な定義がない場合、意思決定は主観的な判断や経験に基づくものになりがちであり、結果に基づいた効果的な改善策の実施が制限されてしまいます。
現場でKPIがコントロールできていない
二つ目は、現場でKPIがコントロールできていないという課題です。例えば、取引先の直近の業績の推移と、自社製品の購入に相関関係があるとした場合、KPIとして取引先の業績の推移を追加するべきでしょうか?営業が取引先の業績をコントロールできるわけではないので、KPIに追加するのに適切とは言えません。
KPIのある数字を伸ばすと他の数字が下がり、売上との相関が弱くなる
三つ目に、KPIのある数字を伸ばすと他の数字が下がり、売上との相関が弱くなるという課題です。営業プロセスのKPIは設定できており、アポイント数や案件数は上昇しているものの、「アポイントから案件へ、案件から受注へ...」といった営業活動を次のフェーズへ進める際の移行率が落ちているという課題があてはまります。
こうした粒度の粗いKPI設定では、KPIが未達成の際の要因を定量的に把握できず、振り返りの精度が低下します。売上を上げるための行動を明確化し、組織の改善のための次のアクションを取れるようにしなければなりません。
効果的なKPIが設定されている状態とは
では、効果的なKPIが設定されている状態とはどんな状態でしょうか?
適切なKPIを設定するためには、不確実性の高い目標達成を細かく分解し、目標達成までの道筋を可視化しなければなりません。
【図1】
上の図では、プロセスについてのKPIとそれぞれのプロセスKPIを達成するためのアクションが、KPIとして可視化されています。このようにプロセスとアクションについてをKPIに盛り込むことで、仮に売上目標が未達成の際も、未達成要因についてを定量的に把握することができます。
組織環境に合わせたKPIの設定方法(カスタマーパスに基づいたKPIの設定方法)
これまでに適切なKPIをどのように設定するかについて解説しました。
しかしKPIの設定は、各会社の組織環境に合わせて最適化が求められます。そこで今回は、組織環境に合わせたKPIを設定する方法として、カスタマーパスに基づいたKPIの設定方法を紹介します。
カスタマーパスとは?
カスタマーパスという言葉をご存じでしょうか?
カスタマーパスとは顧客がサービスなどを購入するまでの意思決定プロセスを言語化したものを指します。カスタマーパスは、「目的(ニーズ)の顕在化」「目的に対する課題整理」「課題解決に向けた戦略の決定」「戦略実現に向けた戦術の候補決定」「戦術実行の意思決定」から成り立っており、それぞれのフェーズに顧客が達したとされる状態を社内で定義づけすることで、アプローチすべき顧客層や、アプローチ戦略・手法・方針が明確になります。
カスタマーパスの設定についての詳細は以下の記事をご覧ください。
受注率を向上させるカスタマーパスとは?言葉の定義と設計方法を徹底解説! part1
カスタマーパスの設定により顧客の製品購入までの意思決定プロセスが明確になりました。顧客のそれぞれの意思決定フェーズに合わせて、意思決定を前に進めるための営業活動をKPIに落とすことが可能となります。
カスタマーパスに基づいたKPIの設定方法(プロセスKPI・アクションKPIの策定)
次に、先ほどのカスタマーパスの設定の仕方も合わせて、KPIの設定方法についてステップに分けて解説します。
Step1:顧客が自社商品を購入する理由やプロセスを考え抜く
最初のステップとして、顧客の購入までの意思決定プロセスである「目的(ニーズ)の顕在化」「目的に対する課題整理」「課題解決に向けた戦略の決定」「戦略実現に向けた戦術の候補決定」「戦術実行の意思決定」についそれぞれ考えましょう。
【図2】
Step2:顧客にリーチすべきタイミングと手法を考える
次に顧客が各フェーズに進んだ際に、どのようなタイミングでどんなフォローを行うかを決定しましょう。例として、顧客からWeb上での資料請求が発生した際に架電を実施する、といったアクションを社内で決定することが考えられます。
Step3:顧客の製品購入までのプロセスをKPI化する
次のステップとして、Step1で特定した顧客の意思決定プロセスに合わせた営業のプロセスをKPIに落とします。
Step4:営業の取るべきアクション/提供価値を明確化する
4つ目のステップとして各フェーズに対して、営業がどんなアクションを取ることで次のフェーズに進めるのかを洗い出しましょう。下の図のように具体的なアクションと提供価値を明確化することで、顧客の状況・状態に合わせた適切な営業活動が取れるようになります。
【図3】
Step5:各フェーズで売り上げにつながるアクションをKPI化する
最後に、先ほどのステップで抽出したアクションをKPIへと落とし、記録として蓄積します。
【図4】
顧客の意思決定フェーズが把握できていない場合では、意思決定フェーズに対応しない訴求や競合差別化のない画一的な提案を行ってしまい、案件のフェーズアップ機会を損失する事態に発展するかもしれません。カスタマーパスに基づいたKPIを設定することによって、それぞれの意思決定フェーズにおける顧客の状態が定義され、営業が取るべき正しいアクションが体系化されます。
KPIが受注を達成するまでのマイルストーンとして正しく機能し、効果的な営業活動を行えていることから生まれる自信やモチベーションの創出にもつながります。
まとめ
今回の章では、KPIについての基本的な内容から、KPIを効果的に設定できていない組織に見受けられる課題、効果的なKPIの設定方法について取り上げました。
組織環境に合わせたKPIの設定は、営業のパフォーマンスの最大化と新たな営業メンバーの立ち上がりに大きく貢献します。
営業組織に再現性をもたらしたいと考えている読者の方がいましたら、ぜひ一度カスタマーパスに基づいたKPIの設定を参考にしてみてください。本記事が少しでもKPIの設定にお役立ちできれば幸いです。
次章では、組織が成長し続けるためのKPIが見つかる分析方法についてご紹介します。こちらもぜひご一読いただければ幸いです。
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