受注率を向上させるカスタマーパスとは?言葉の定義と設計方法を徹底解説! part1

「受注できそうだった案件がなぜか失注することが多い」 「属人的な営業で、トップパフォーマー以外があまり売ることができない」 といったお悩みはありませんか? 本記事では、そのようなお悩みに役立つ「カスタマーパス」という考え方について徹底解説いたします。 本記事を読んでいただくと、 カスタマーパスの定義や効能 一般的な営業フェーズとの違い カスタマーパスの設計方法 について理解でき、すぐに実践することができます。 ぜひ、ご一読ください。

INDEX目次

1.カスタマーパスとは?

「カスタマーパス」という言葉の意味をご存知でしょうか。

直訳すると「顧客の意思決定順序」という意味ですが、イメージしづらいかもしれないのでもう少しかみ砕いて表現すると、カスタマーパスとは

お客様がサービスなどを購入するまでの意思決定プロセスを言語化したもの

です。

何か商品やサービスを購入するとき、多くの人は購入金額の上限を考えたり、いろいろな会社の商品を比較してどの商品にするかを決めたりと、思考を重ねた上で購入していると思います。

その過程を「カスタマーパス」と言い、営業活動だけでなく、オンボーディングなどの社内の諸問題を解決する際にもとても役に立ちます。

2.カスタマーパスの効能

カスタマーパスを設定し、活用していくことで案件管理やKPI設計、顧客アプローチ戦略設計がし易くなるというメリットがあります。

カスタマーパスを整理すると、お客様がどのような意思決定をしてサービス等を購入するのかが分かるようになるため、

  • 営業がお客様にどうアプローチをすればよいか
  • どの意思決定フェーズにいるお客様を狙うのが自社にとって良いのか

(例:すでに購入目的が明確になっているお客様にアプローチした方が良いのか、

   購入目的が明確になっていないお客様にアプローチしてどんどんフェーズ移行

   させていった方が良いのか など)

といったアプローチすべき顧客層や、アプローチ戦略・手法・方針が見えやすくなります。(顧客アプローチ戦略設計)

上記のようにアプローチ戦略を設計できたら、営業が注力すべきプロセスも明確になってきます。

例えば、

  • 今、自分たちが売っているものが競合との差別化に注力すべき商品なのか
  • お客様がまだ認識していないニーズを顕在化させた上で、それは自分たちのサービス等で解決できると結びつけていくことが営業として重要なのか

などが見えてきます。

さらに、営業が注力すべきプロセスが分かると、案件を進めるにあたって必要なアクションが明確になってきます。(案件管理設計)

例えば、本来機能訴求すべきでないお客様に機能について説明したり、そのサービスを利用する上での目的の顕在化が完了しているお客様に対して再度啓蒙しても、購入にはつながらないため、営業は別の話をする必要があります。

このように適切な顧客の状況・状態に対して、適切なアクションをとるという全体設計ができると、お客様の各意思決定フェーズにおいて追うべきKPIが明確になるなど、カスタマーパスにはさまざまな効能があります。(KPI設計)

カスタマーパスの効能を簡単にまとめると、以下のようになります。

【営業活動におけるカスタマーパスの効能】

  ①案件管理設計

   ・営業で注力すべきプロセスが明確になる

   ・適切な管理フェーズとその定義項目が明確になる

   ・案件進行に必要なアクションが明確になる

  ②KPI設計

   ・適切なプロセスKPIが明確になる

   ・適切なアクションKPIが明確になる

  ③顧客アプローチ戦略設計

   ・適切なターゲット(意思決定フェーズ)が明確になる

   ・適切なアプローチ手法が明確になる

以上からも分かるように、カスタマーパスは営業組織が売上を上げるために重要な制度を設計する際に根幹となるものです。

このカスタマーパスは業界や商材等によって異なりますので、自社の顧客に合わせて考える必要があります。

今回は便宜上、ごく一般的で、基本的なカスタマーパスの設計方法について説明したいと思います。

第2章で説明したように、カスタマーパスはお客様がサービスなどを購入するまでの意思決定プロセスを言語化したものなので、お客様目線で各フェーズを設定する必要があります。

以前、「具体提案」というフェーズで失注することが多いという悩みを抱えている会社のコンサルティングに入らせていただいたときに、その会社がもともと設定していたフェーズについて分析したことがあります。

記録されていたデータを見ると、確かにそこでの多くの失注が発生していましたが、判然としない部分があったので、カスタマーパスを作成して分析し直すことにしました。

その結果、実際には「具体提案」の際に数値が落ちていたのではなく、多くは手前の「目的の顕在化」や「目的に対する課題整理」の部分で数値が落ちており、それがもとのフェーズの「具体提案」のタイミングで見える化されていたということが判明しました。

今までの営業活動の経験や、上の図のような既存の営業フェーズに引っ張られて、営業目線でカスタマーパスを考えてしまいがちですが、そのような営業主体のパスではサプライズ失注が起きやすくなってしまいます。

案件をより正しく把握するためにも、カスタマーパスはお客様目線で設定しましょう。

3.カスタマーパスの全体像

一般の消費者や企業がサービスの購入を検討する場合、「売上を上げたい」などの目的(ニーズ)が明確にある上で、その目的を達成するにあたってどのような課題があるのか、その課題はどうすれば解決できるのかを考え、購入に至ります。

このような顧客の思考プロセスは次の5つのフェーズから成り立っており、カスタマーパスは①から順に設計していきます。

①「目的(ニーズ)の顕在化」

②「目的に対する課題整理」

③「課題解決に向けた戦略の決定」

④「戦略実現に向けた戦術の候補決定」

⑤「戦術実行の意思決定」

それでは、カスタマーパスの各フェーズについて詳しく見ていきましょう。

4.目的(ニーズ)の顕在化

まずはお客様がどのような目的(ニーズ)を持っているのかを明らかにしましょう。

これを「目的の顕在化」と言います。

私たち消費者が何か商品やサービスを購入するときも、

「日頃、日用品を買いに行くために車がほしい」

「子どものためにお菓子を作ってあげたいから、オーブン機能付きの電子レンジがいいな」

といったように、何かしらの目的があるはずです。

それは企業も同じです。

特に企業では社内で稟議を通し、購入の許可をもらう必要があるため、

より明確で強いニーズがあってはじめて購入に至ります。

ニーズが不明確であるうちは営業が無理やり案件を進めても、

失注してしまうことが多いので、丁寧に取り組む必要があります。

営業シーンにおいては、顧客から明確に提供しているサービスが解決できる機能的な課題を感じていると伝えられるケースが多いですが、カスタマーパスにおいてはその機能的課題がどのようにして経営課題に紐づくのか逆算して思考をします。

つまり、顧客の経営課題を分解し自社の販促している製品が解決できうる課題に辿り着くまでの思考を言語化していきます。

経営課題をMECEに分解していく作業の上段は大きく企業や販促している製品によって異なることはありません。企業は売上を向上させるか、コストを下げるか、リスク管理をするのかの大きな3つが最上流課題として挙げられます。
またその下層に売上を向上させるニーズであれば、取引アカウント数の向上か、生涯売上金額の向上に分かれます。

このように経営課題を分解していき、自社が解決できる経営課題は何かを言語化していくのが目的の顕在化で行う整理になります。

仮にビジネスチャットツールである場合、コストダウンやコストダウンの中での生産性の向上が顧客のサービス活用目的かと思われます。

顧客がサービスを導入する意思決定をする際、生産性の向上が課題であるという粒度ではなくより分解され、解像度の高い課題を感じています。
その詳細な顧客課題の分解を次フェーズ以降で実施していきます。

5.目的に対する課題の整理

次に、その目的を達成するにあたって、どのような課題があるかを考えます(目的に対する課題整理)。

もし、解決すべき課題を複数抱えている場合は、どの課題から取りかかるべきかも考えましょう。

例えば自社の売上アップを図りたいと考えている企業があったとします。

この企業の目的(ニーズ)は「自社の売上アップ」で、すでにカスタマーパスの第一フェーズである「目的の顕在化」までは完了しているので、そのニーズを達成するために何が課題になっているのかを考えていきましょう。

売上アップのためには上の図のように第二階層として「取引アカウント数の増加」・「生涯売上金額/アカウントの向上」のどちらかを行う必要があります。

また、それぞれ上記の第二階層の下には第三階層が紐付いております。

このようにお客様の課題をMECEに考えていくことが重要です。

また同時に、抱えている課題について「そうなっているのはなぜか?」と、深堀りして考えていくことが大切です。

例えば、「取引アカウント数が増えない」「リピート率・継続率が低い」などの課題があるお客様がいるとします。

その場合お客様には、

  • なぜ取引アカウント数が増えないのか?

 →そもそものアプローチ実施数が少ないので、新規リード接触数が少ない

  • なぜリピート率・継続率が低いのか?

 →顧客満足度が低い

といったような具合で、なぜそうなのか?を考える必要があります。

このように、目的(ニーズ)を達成するために現在課題となっていることを細分化して洗い出しましょう。

そして、どの課題が優先度が高いのか、先に解決すべきなのかをお客様と一緒に考えましょう。

6.まとめ

いかがでしたか。

本記事ではカスタマーパスの定義や効能、一般的な営業フェーズとの違い、「目的(ニーズ)の顕在化」~「目的に対する課題整理」までの設計方法について解説しました。

近年、日本でも注目されている「カスタマーパス」は、お客様がサービスなどを購入するまでの意思決定プロセスを言語化したもので、営業においては注力すべきターゲットやプロセス、アクションが明確になるなど、案件管理やKPI設計、顧客アプローチ戦略設計の際にとても有用です。

下記①~⑤の5つのフェーズに分かれており、①から順に定義づけをし、設計していきます。

①目的(ニーズ)の顕在化

②目的に対する課題整理

③課題解決に向けた戦略の決定

④戦略実現に向けた戦術の候補決定

⑤戦術実行の意思決定

カスタマーパスは顧客の意思決定プロセスを言語化するものなので、設計する際は顧客目線で設計するのがポイントです。

本記事でご紹介できなかった③以降の設計方法については、こちらの記事をご覧ください。