株式会社Speee

営業に魔法のスパイスはない。Speeeがセールスイネーブルメントに見出した可能性とは

今回お話をお伺いしたのは株式会社Speee 経営企画本部長の渡邊さんと、マーケティングインテリジェンス事業本部マーケティング部部長の藤井さん。2020年に東証スタンダード市場に上場し、さらに事業拡大を目指す中で「圧倒的な営業力向上のためにはより科学的なアプローチが必須だ」との思いからSALESCOREとの取り組みを開始しました。SALESCOREとの対話の中でセールスイネーブルメントの理解を深め、業界でも類を見ない水準でのプロジェクトにまで成長。おふたりに取り組み当初の状況や感じていた課題、セールスイネーブルメントに全社的に取り組んだ理由、生まれている成果についてお伺いしました。

サマリ

  • セールスイネーブルメントは単なる型化・仕組み化ではなく、営業組織のスケーラビリティを高めるための基盤であり事業成長を目指す上での必須科目

  • Speeeのイネーブルメントは無形・高価格帯商材という特性と、連続的な事業開発を前提としているという点で非常に難易度が高い

  • 短期間でイネーブルメント第一フェーズを成功させられた国内屈指のプロジェクト水準の背景には、土台となる思想に基づく一貫性のある改革があった










事業が多角化していく中で、営業を重要な分野として注力している理由

ーーー今回セールスイネーブルメントに取り組むことになった背景にはどのような状況があったのでしょうか?

渡邊:Speeeは2007年にweb集客領域の支援事業から立ち上がり、現在はマーケティング全般の支援、不動産やリフォーム、介護といったリアル産業のDXまで事業領域を拡張しています。連続的なイノベーションを起こし、事業創造をしていくためにも既存事業の安定化と新規事業開発の両輪を回し続ける必要があります。

弊社がそれを体現しながら事業成長できてきた理由の一つとして、優秀な営業パーソンたちの活躍の結果、市場でもトップレベルの営業力を誇ることができたことが挙げられます。難易度の高い事業でさらに成功確度を高めるために、SaaSを中心に成功事例が出てきていたセールスイネーブルメントを我々のような無形・高価格な商材でも実現できないかということを考え始めました。

また、営業に再現性を持たせることは事業成長の加速だけでなく、若手メンバーの成長機会創出に繋がります。早期で戦力化する仕組みができれば、採用と配置の幅が出てくるので、育ったメンバーにより高難易度のミッションへ挑戦してもらうという流れが事業側としてもやりやすく、組織として良い循環を生むことできると考えています。

藤井 慧里さん/渡邊 洋介さん



ーーー営業組織の理想の状態はどのように考えられていたのでしょうか?

藤井:当初は、顧客に価値が届くまでのSTEPを論理的かつ分解可能な範囲まで科学し、それを型化することで成果に再現性を持たすことができている状態を理想としていました。

顧客のニーズの多様化と弊社の支援領域の拡大から営業にも求められるスキルは複雑化していますが、このような環境でも営業が成果を出し続けるためにまず土台となる型を定義していくことからスタートすべきだと考えていたんです。

そうすることで効率的にパイプラインの改善プロセスを回したり職能育成をすることができ、短期的には育成スピードが改善されますし、長期的には組織を拡大しやすくなり、大きな売上につながると考えたためです。

ただ、実際に取り組みをしていく中で、イネーブルメントとは単なる営業行動の型化などではなく、組織のスケーラビリティを最大化するための装置そのもので、非常に複雑かつ広範囲にわたるものなんだと気づきました。

こういった抽象的な概念の解釈をともに深めていけるという点でも、SALESCOREをパートナーとして弊社のイネーブルメント立ち上げをできたのは非常によかったと感じています。


ーーー弊社に発注いただいた決め手はどのような点だったのでしょうか?

藤井:我々にとって、セールスイネーブルメントは今後の事業成長の鍵を握る重要な取り組みになるので、単に過去の成功体験をパッケージ売りしているのではなく、目の前の問題に対して本質的な解決を目指すプロジェクト推進が可能なパートナーを探していました。

SALESCOREの松本さんとは、提案段階から何度も議論を繰り返す中で、弊社の理想を理解した上で率直にリスクにも言及してくれるような信頼関係ができたのが良かったです。最終的にはいつどの問題が解決されるのか、そのためにはどのようなプロセスやリソースが必要なのかが明記された「その時点で最も成功確度が高いと思える」ロードマップを提示してくれたことが決め手になりましたね。










セールスイネーブルメントは事業における共通のOSとなる

ーーープロジェクトを進めていくなかで、どのような変化を感じられましたか?

藤井:一番大きな変化は、日々のパイプライン管理や職能育成における仮説検証精度が上がったことです。事業を安定的に成長させていくという目的に対して、今考えられる最も正しい戦略が練られている状態が実現できるようになりました。


渡邊:この精度という話は経営企画の観点でも非常に重要です。組織規模やリード品質などの一定の条件下でどれくらいの売上数値を期待できるのかということがロジカルに想定できるので、事業を拡大する際にも新規売上金額も読みやすくなります。育成や採用の戦略も洗練され、結果的に投資を思い切ってできるようになったことは大きな価値です。

セールスイネーブルメントという共通のOSがあることで、営業の採用から育成、成果が出るまでのプロセスがクリアになっています。新規事業の営業組織や戦略を検討するときにこれまではゼロから考える必要がありましたが、体感として8合目くらいから始められるようになっています。


ーーー営業現場ではどのような変化がありましたか?

藤井:まず予実管理がシステム面で強化されました。元々SFAにあるダッシュボードでは実績ベースで表示されていたこともあり、目標とその差分をタイムリーに把握するまでの負荷は少なからずかかっていました。

プロジェクトの一貫でSALESCOREのダッシュボードを利用しはじめたのですが、ダッシュボード上で目標設定が可能で、達成状態が表示されることにより、現状把握から目標までのギャップを意識した活動がより徹底されるように変化しました。

営業日の進捗率を加味して、計画に対して達成状況が青だと安全圏、赤だと目標未達になることがひと目でわかるようになることもあり、赤字が表示されると、メンバーは複数KPIから何を改善すれば目標達成できるかを考え、日々の完遂力がかなり上がってきました。

SALESCOREダッシュボードのイメージ( ※サンプルデータ)


また、顧客が当社を選んでくださるまでのプロセスの解像度が上がった結果、顧客のニーズを的確に捉え、どのようなアクションが必要なのか自発的に見直したり、より高いレベルでPDCAが回りはじめましたね。難易度が高い案件でもどのようなスキルが求められるか、どのようにアプローチするべきかも言語化できたことでメンバーの一つの成長指針として機能し、やりがいの高まりにもポジティブな影響があります。


ーーー営業現場の変化の要因はなんでしょうか?

藤井:こういった変化が生まれた成功要因は、セールスイネーブルメントの取り組みを、ミッションの刷新と同時に行ったことだと考えています。9月にSALESCOREに現場に入っていただいたときに、第二創業期という形でミッションを刷新しています。今回の取り組みは業務フローの一部を変えるだけでなく、新しい大きな目的に対して必ず必要なものであり、それを全員で積極的に学んでいくものであるというスタンスに全員でシフトしたんです。

メンバーがミッションとして掲げている「最高の営業体験」を日頃から口にしていて、組織の雰囲気も明るくなりましたね。



「最高の営業体験」が単なる標語にならないように、徹底的に顧客の購買プロセスを分析した上で顧客体験を考慮した営業の仕組みづくりを心がけています。どれだけ良い仕組みを作っても、絵に描いた餅になってしまっては意味がありませんので、現場浸透フェーズでは朝会や夕会、ロープレの細かな部分までSALESCOREさんと議論しながら設計して、定着させていくことを目指しました。

その結果、顧客の成功に向き合っていくという共通認識を持った発言や行動が全体で当たり前となり、顧客からも感謝される機会が増えたという声を聞きます。受注前のセールスの活動と受注後の既存のコンサルタントの活動が一貫していることで、受注前後で顧客からの期待値と成果の整合性がとれ、中長期的な顧客満足にも繋がっているのではないかと考えています。


セールスイネーブルメントは事業運営に必須のスキルになってくる

ーーー今回のプロジェクトの簡単な振り返りと今後のご展望をお聞かせください

藤井:一番の学びとしては、セールスに携わるメンバー全員で同じ絵をみることの大切さです。顧客にどのような価値を提供するのか、そのためにやるべきことは何か、全員が同じ理想に向かって走れるように言語化してその思想の上に仕組みや施策を乗せていく。また、自分達の現在地が定量的に可視化されていることで、具体的に何を改善する必要があるのかがズレなく認識できる環境を整える。

インサイドセールス、フィールドセールス、セールスアナリスト、プロモーションチーム、営業企画などさまざまな職種が、自分達の理想と現状について共通認識をもった上で日々のPDCAを回すことで、一人一人のエネルギーが効果的にパフォーマンスへとつながりやすくなります。これからイネーブルメントに取り組まれる方には、施策単体ではなく、そもそもの思想部分を固めることの重要性を伝えたいです。

営業で成果を出すために「魔法のスパイス」のようなものはありません。日本における事業運営においても、セールスイネーブルメントのスキルは当たり前になってくるのではないかと思います。

今後はよりイネーブルメントレベルを上げていくための挑戦を続けますが、その中で外せないテーマの一つとなってくるのが顧客データ基盤やAIといったテックの活用でしょう。共通思想を描くことや組織づくり、パイプライン管理の仕組み化から先端技術を活用した環境整備まで、「営業組織のスケーラビリティを最大化させる」という命題に対してやるべきことをしっかり行っていきます。


渡邊:今回会社として体系的に取り組んだことで、ここまで話したように経営的にも事業部的にもSpeeeの営業組織はより頼もしく進化してくれました。

セールスイネーブルメントを追求するという事は、営業活動の前提となる顧客、自社、競合の理解を深掘りし続け、必要な価値提供方法をアップデートしながら各メンバーとチームが活動していくという事です。これは難易度や奥行きが非常に高く、だからこそ、Speeeにおける営業というキャリアの面白みも増してきているように感じています。売るだけの能力が求められるのではなく、それこそ最高の体験を届けるクリエイティブなビジネス集団としてどうあるべきなのかと。


渡邊:我々のセールスイネーブルメントはまだまだ完成形ではありません。顧客のニーズや取り巻く環境も変化にあわせて、持続的に進化させていかなければなりません。簡単ではありませんが、顧客に向き合いながら、提供価値を高め、再現性も同時に担保していくということを追求していきたいと思います。


ー藤井さん、渡邊さん、貴重なお話ありがとうございました!