強い営業組織の文化として必要な5つの要素 ~計画編~

前回の記事では、営業の質を高める2種類の「記録→計画→実行」サイクルと、強い営業組織の文化をつくる際に役立つフレームワーク"5 Standards Model"の要素の1つである「記録」について解説しました。 詳しくは「強い営業組織の文化として必要な5つの要素 ~記録編~」をご参照ください。 本記事では5 Standards Modelの要素の1つである「計画」について詳しく解説します。 ぜひご一読ください。

INDEX目次

1.5 Standards Modelにおける"計画"とは

5 Standards Modelにおける「計画」とは、データや施策、組織に関して問題意識を持ち、記録した顧客・営業活動の情報をもとに目標設計や達成に向けた計画を策定し、改善していくという一連の流れを指しており、営業の質を高めるためにはこの「計画」の精度を高めることが重要です。

例えば、次のような2つの計画があった場合、どちらの計画の方が精度が高いと感じますか?

  • 計画1:100万円の売上を上げる
  • 計画2:単価20万の商品を5件受注するために、15件訪問する

計画1は100万円の売上を上げるために何をしたらよいのかがわからないため、漠然とした計画になってしまっています。

このような計画を立てている営業組織では、売上を上げるためにとるアクションが個々人によって異なるので、売上目標が未達になった場合に営業プロセスがブラックボックスとなり、営業組織として何をどう改善したらよいのかという「計画」を立てることができません。

一方、計画2の方が具体的に何をすればよいかという細かいアクションまで決まっているので、明日からすぐに行動に移すことができますし、仮に未達になった場合でも、どこで上手くいかなかったのかを振り返りやすくなります。

このように、精度の高い「計画」を立てることで実行度と振り返りの質を高めることができるのですが、実際に計画2のような精度の高い計画を立てる際はKPIを設定します。

売上は平均単価に受注数をかけて算出しますが、営業は特に受注数を増やすために動いていくことが多いかと思います。

受注数を増やすためには、提案数を多くする必要がありますし、提案数を増やすためには多くのアポ実施数が必要です...といったように、KGI(Key Goal Indicatorの略、重要目標達成指標の意)である売上を上げるために不可欠なプロセスをプロセスKPIと言い、細分化できるところまで細分化し、KPI化して設定します。

このプロセスKPIを置くことによって営業プロセスを可視化でき、課題の特定や振り返りがしやすくなります。

ここまでは、すでに取り組んでいる組織もあるかと思いますが、プロセスKPIまでしか設定していない場合、売上目標が未達だった際に受注数と案件数が未達なので、架電・DM数を増やしてアポ獲得数を増やそうという動きになりがちです。

そのような量を増やす動きだけではなく、決済者と現場担当者が同席している面談(≒ペアアポ)を増やすことで案件数から受注数への移行率を高め、結果として受注数を増やすことが可能です。

このように、プロセスKPIを達成するために必要なアクションをKPI化したものをアクションKPIと呼んでいます。

このアクションKPIを設定することで、プロセスKPIの数値や移行率を上昇させるアクションを可視化でき、なぜ目標達成・成約ができたのか要因を分析できるようになります。

一般的に営業組織が強いと言われている企業では、15~20個のKPIを設置しています。

仮説と実行が伴っていれば計画が細かすぎることはないのですが、80~100個となってくると、すべてのKPIを計測しつづけていくのは営業メンバーのモチベーション的にも難しいため、15~20個くらいが科学しやすいです。

もし、プロセスKPIしか設定していない場合は、どのようなアクションをすれば各KPIの水準を高めることができるのかを一歩踏み込んで科学していき、アクションKPIに落とし込んでいくと良いでしょう。

2.事例

“ある強い営業組織”では、エリアごとに一律の目標ではなく昨対をもとに目標値を設定していると聞いたことがあります。

そのため、達成困難なのではないかと思ってしまうような無理難題を押し付けられることはありません。

加えて、期初に設定した「年次目標」と、来月はこれくらいになるだろうという予測をもとに現場に近いレイヤーで決め、遂行する「月次目標」の2つの目標を設定しているそうです。

この仕組みがあるおかげで、仮に年次目標をすでに達成していたとしても、この流れでいくと来月はより高い水準の目標を達成できるかもしれないということが判明した場合、月次目標が引き上げることができ、より高い目標に挑戦し続ける状態をつくることができます。

以上のように、達成不可能な目標にならない範囲で営業が現状に満足することなく、常に難しい目標を追いかけることができるシステムを構築することは、売上を上げ続ける強い組織にするためにはとても重要です。

また、どんなアクションKPIが営業プロセスに効くかというのが、トレンドや営業所、事業部によってクォーター毎や半期毎に変わるというのも聞いたことがあります。

例えば、工場に機械を売りに行く営業は、訪問した際にお客様の工場で実際に機械を見ることによって、よりクロスセルやアップセルがしやすいということが記録していたデータから明らかだったので、現場確認件数をKPIとして取ることになり、現場確認をしたものの中からどれくらい案件化したか、売れているかを追っていたそうです。

以上のように、データを使いながら仮説を立てて実行することでPDCAを回し、計画の精度を上げていく取り組みは確実に営業の質を高め、組織全体を強くしていきます。

3.まとめ

いかがでしたでしょうか。

本記事では5 Standards Modelの要素の1つである「計画」について解説しました。

営業の質を高め、強い営業組織をつくるためには計画の精度を高める必要があります。

そのためには売上目標(KGI)だけでなく、具体的に何をすればよいかという細かいプロセス(プロセスKPI)や、細かいアクション(アクションKPI)を適切に設定することが重要です。

ここがずれていると、計画を実行しても成果に結びつくことはありませんのでご注意ください。

加えて、目標が高すぎたり低すぎたりしてしまうと、実行が最大化されなかったり、必要な振り返りをおこなうことができなくなってしまいますので、現場に近い方々を巻き込みながら設定していくとよいでしょう。

次の記事では5 Standards Modelの要素の1つである「実行」について詳しく解説します。

ご興味のある方は是非ご覧ください。

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