強い営業組織の文化として必要な5つの要素 ~接触面積編~

売上を上げ続けることができる強い営業組織には、 「1日に9件のアポイントを必ずとる」 「最低100件は架電する」 のような組織の中で当たり前となっているルール=文化が根付いています。 前回の記事では、そのような文化をつくる際に役立つフレームワーク"5 Standards Model"の概要や、強い営業組織の文化をつくる上で注意すべきこと等を解説しました。 詳しくは「再現性のある強い営業組織の文化をつくるフレームワーク"5 Standards Model"」をご参照ください。 本記事からは、5 Standards Modelを構成する「5つの要素」について詳しく見ていきたいと思います。

INDEX目次

1.5 Standards Modelにおける"接触面積"とは

5 Standards Modelにおける「接触面積」とは、メールや電話、面談といったコミュニケーション手段におけるお客様との接点の量のことです。

お客様に商品やサービスを買ってもらうためには、まずは営業がお客様と接点を持つ必要があります。

営業がお客様とより多くの接点を持つためには、どのようなことを意識して営業活動をおこなっていけばよいのでしょうか。

それは、次の2つです。

①接触のために使える時間

②時間あたりの接触量

それでは、①・②について詳しく見ていきましょう。

1-1.「接触のために使える時間」

1-1-1.概要

①の「接触のために使える時間」とは、1日の勤務時間内(所定労働時間が9時~18時までの場合、それから休憩時間を除いた時間)に実際にお客様と接触できた時間のことです。

より多くのお客様と接点をもつためには、限られた時間を有効活用することがとても大切です。

しかしながら、McKinsey & Companyの「日本の営業生産性はなぜ低いのか」(2021年)によると、日本の営業組織では資料作成や雑務に充てている時間が多く、お客様と接触するために使える時間が平均で3分の1もないことが分かっています。

1-1-2.事例

「接触面積」の水準が高い”ある会社”の営業組織では、平日2日間は社内で、3日間は社外に出て営業活動をするというルールがあるというのを聞いたことがあります。

社内のときは出社してから17時までずっと電話をし続け、他の業務はほぼしないそうです。

一方、社外のときは午前中に2件、午後に3件、計5件は最低でも訪問するのが「当たり前」になっており、1日の中にまず1時間のアポイントを5つ入れたら、少しでも訪問件数を高めるために空いてる時間に30分などの短いアポイントを入れて1日の予定を埋めてしまうとおっしゃっていました。

また、訪問件数96件/月、面談時間2,400分/月、面談人数88人/月、電話平均120分/日などのようにKPIごとに最短の達成ラインを設けているのですが、未達の人はほとんどいないそうです。

加えて、お客様と接触している時間を意味のあるものにするため、「通話時間」というKPIを置いているとも聞きました。

電話でアポイントをとるとき、1回あたりの通話に長い時間がかかってしまう営業と、1回の通話が短時間で済む営業とでは、後者の方がより多くのお客様にアポイントの電話をかけることができるため、勤務時間内という限られた時間の中でより多くのお客様と接点をもてる可能性があります。

また、この会社では勤務時間中は営業がお客様との接触に最大限時間を割けるよう、他部署の方も気を遣っており、総務などが「これを入力しておいてください」のような営業活動に関係のない社内連絡をする際は、絶対に営業時間内に送らないというのも聞いたことがあります。

このことからも、この会社では営業がお客様との接触に使える時間を確保することが大切であるという共通認識を営業組織だけでなく、全社レベルでもっており、それが「文化」になっていることがわかります。

1-2.「時間あたりの接触量」

1-2-1.概要

一方、②の「時間あたりの接触量」とは1つのアポイントにつき、お客様と接点を持つことができた量のことです。

より多くのお客様と接点をもつためには、効率的に接点を増やしていくことも非常に重要です。

例えば、1つ1つのアポイントを単発で対応していった場合と、アポイントで訪問した際に話した担当の方だけでなく、隣の部署の人を紹介してもらったり、上長に出てきてもらったりした場合とでは、後者の方がより効率的に多くの接点をもつことができています。

1-2-2.事例

ある会社では取り扱っている商品が何百種類もあるため、10~15人が同じ取引先を担当しているのですが、その担当者間で取引先の情報を共有したり、他の担当者の商品も売れるよう”種まき”をしているというのを聞いたことがあります。

例えば、ある商品の担当者がお客様とコミュニケーションをとる中で「この取引先には他の商品も売れそうだ」と感じた場合、「他の部署でお困りは無いですか」と声をかけたり、積極的に他の担当者の商品情報を提供したりするそうです。

加えて、お客様とのやりとりの中で他の担当者にとって有益な情報があった場合はその情報を該当の担当者に共有してアポイントにつなげたりするともおっしゃっていました。

また、別の組織で高い水準で活躍されている方にお話を聞いた際、1件のアポイントの最初とその間、そして最後で少なくても1回ずつはお客様に紹介のお願いをしているとおっしゃっていました。

受付の部署表を控えたり、その会社の組織図や関連会社一覧を取引先の方と見ながら、どの部署に誰がいるのかを教えてもらうことで紹介につなげているようです。

このように、各営業が個人の営業成績を追求するだけでなく、他の営業や部署の利益も考えて行動していくことは、時間あたりの接触量を増やし、全社の売上を最大化するためにはとても大切なことです。

この会社ではそのような+αの行動に対して人事評価の際に加点ポイントを与えるなど、意欲的に取り組める仕組みになっていたというのも、「文化」として浸透している大きな要因になっていると思います。

2.まとめ

いかがでしたでしょうか。

本記事では、5 Standards Modelの要素の1つである「接触面積」について解説しました。

お客様に商品やサービスを買ってもらい、売上を上げるためには、まずは営業がより多くのお客様と、多くの接点を持つ必要があります。

そのためには、

・接触のために使える時間

・時間あたりの接触量

を増やしていくことが重要です。

そして、これらを高めていくために行動することが「当たり前」な営業組織を目指して、ルールや仕組みをつくり、「文化」として浸透させていきましょう。

次の記事では営業の質を高める2種類の「記録→計画→実行」サイクルと、5 Standards Modelの要素の1つである「記録」について詳しく解説します。

ご興味のある方は是非ご覧ください。

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