強い営業組織の文化として必要な5つの要素 ~吸収編~

前回の記事では、強い営業組織の文化をつくる際に役立つフレームワーク"5 Standards Model"の要素の1つである「実行」について解説しました。 詳しくは「強い営業組織の文化として必要な5つの要素 ~実行編~」をご参照ください。

売上を上げ続ける強い営業組織にするためには、営業の量や質を高めるだけでなく、再現性を高めることも重要です。 そこで本記事では5 Standards Modelの最後の要素である「吸収」について詳しく解説します。

再現性を高めるには組織内にある成功事例を吸収し、真似することが近道なのですが、 実際に売れている営業になぜ売れているか聞いたり、売れた案件について情報を共有したりしている組織は少数です。

「営業はセンス」
「今回売上を上げれたのは偶然、ラッキー」

と半ば諦めている方もいらっしゃるかもしれません。

強い営業組織の多くは、成功事例を「吸収」することも得意としています。 本記事を読んでいただくと、強い営業組織がどのようにノウハウ等を吸収してるのか理解でき、実践することができます。 ぜひご一読ください。

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INDEX目次

5 Standards Modelにおける"吸収"とは

「吸収」とは、成功事例を他の営業メンバーも再現できる形で言語化・共有したり、ほかの人からどん欲に学んだりすることです。

この「吸収」の水準が高い組織にするためには、次の2つの点を意識して取り組むとよいでしょう。

  • 組織内で情報等のシェアが積極的におこなわれるような文化を醸成する
  • 組織知としてのアセット(資産)化

一般的に情報やノウハウを組織内に浸透させるとき、それらを持っている人が持っていない人に対して共有する場合が多いです。

実際に勉強会など情報やノウハウを共有するための場をすでに設けたり、業界知識や受注実績等をメールで他のメンバーに展開したり、KPIの未達について悩んでいるメンバーに上司が他の人がやっていることを教えたりしている組織もあるかと思います。

もちろん、それも「吸収」の水準を上げるための大切な取り組みの1つなのですが、同様に情報等を必要としている人自身が積極的に取りに行くことも重要です。

「吸収」の水準が高い組織では情報が欲しいとき、それを持っているのが他部署であっても電話をするなどして情報を取りに行くそうです。

情報を取りに行っている側は必要に迫られて行動しているため、情報の吸収スピードが速く、結果につながりやすい傾向があります。

情報を持っている人が共有するだけでなく、組織内でメンバー同士が気軽に情報をシェアしあうことができる雰囲気や文化を醸成していきましょう。

それに加えて、スムーズに情報をシェアすることができる仕組みをつくり、シェアされた情報を組織知として資産化していくことも重要です。

例えば、スプレッドシートなどでシェア用フォーマットを作成したり、SFAやCRMを導入したりして、日頃から情報やノウハウをしっかりと記録しておき、検索すれば誰でもすぐに情報を見つけることができる状態にしておくなど、様々な方法が考えられます。

各営業の電話やオンライン商談を録音・録画し、そのデータを誰もが見れる場所に保存しておくのもよいでしょう。

また、各メンバーのKPIの達成状況をBIツールを使用して可視化することで、KPIについて悩んでいるメンバーが達成しているメンバーにその秘訣を聞くきっかけになります。

さらに、月次営業会議等で成功事例をもっているメンバーが、他のメンバーなどにナレッジをプレゼンし、それを賞賛・表彰するような仕組み・制度設計があると、情報をシェアすることに対するモチベーションを高めることができます。

以上のように、情報やノウハウをどん欲に吸収する文化がつくられると、組織内で互いの成功例をシェアし合うというコミュニケーションが生まれ、チームが活性化していきます。

一方で、すでに売上を上げている人など、中には情報をシェアし合うことに対して必要性を感じない人が出てくることがあります。

そのような人には、会社全体の利益を最大化することが目的であり、全社的な取り組みであるということを認識・理解してもらえるような働きかけが必要です。

事例

海外のある会社では1ヶ月に1回、営業メンバーやマネージャーに営業が自身の良くなかった電話と、一番良かった電話の内容を記録したデータを提出することがルール化されているというのを聞いたことがあります。

マネージャーはその後、良かった電話として提出されたもの中から1番良かったものを選び、この電話のどこが良いのかを言語化した上で「こういう理由でよかったのでみんなで真似しましょう」とコメントを添えて、全社に共有するそうです。

同様の事例は日本にもあります。

その会社では、マネージャーがKPIの達成率が良い人に電話してその理由をヒアリングし、その内容をメールで他の営業メンバーに送っているそうです。

その際、件名等に「トップ営業からのアドバイス」と記載したり、その人を褒めるような内容を盛り込むことで、メンバーのモチベーションが高まり、KPIが上がるという話を聞きました。

また、別のある会社では受注したという報告が入ると、すぐに周りにいるメンバーが集まってきて「なんで売れたんですか?」と質問されるそうです。

純粋に受注が決まったメンバーを賞賛する気持ちからそのような行動をとっていると思うのですが、自分の売りに繋がるかもしれないという意図もあると思います。

さらに全国に営業所がある別の会社では、商品が売れた際に他の営業所の人から

「××という商品を受注したと聞いたのですが、どのようなトークをしたのかなど詳しく教えてください」

と、電話がかかってくることがあるそうです。

今までに付き合いのあった人からの電話であれば、よくある話なのですが、

その会社では一度も話したことが無い社内の人からも先程のような電話がかかってくると言っていました。

以上のように、1人1人が日頃の業務の中から何か学べないかとアンテナを張りめぐらしながら、どん欲に吸収していくことで再現性の高い強い営業組織になっていくのだと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

本記事では5 Standards Modelの要素の1つである「吸収」について解説しました。

再現性のある強い営業組織をつくるためには、この「吸収」の水準を高める必要があります。

まずは、模範となるような良い事例を言語化して組織内で共有するとともに、他者の情報からどん欲に学び、自身の売上につなげていく文化を醸成することが大切です。

そのためには組織全体で学べる環境を整え、情報等をシェアすることに対してインセンティブを設け、メンバーのモチベーションを高めていきましょう。

これまで6つの記事を通して、再現性のある強い営業組織の文化をつくるフレームワーク"5 Standards Model"についてお伝えしてきましたが、最初でもお伝えしたように組織に「文化」を根付かせるのは容易ではありません。

人には現状維持バイアス(変化を受け入れたくない心理作用)があるため、変化を好まないメンバーが出てくることもあるでしょう。

5 Standards Modelに則って組織を変革していく際は、リーダーシップのある人や改善意欲の高い人を中心に据えて進めていくとうまくいくかと思います。

本記事が皆様の組織づくりの一助となりましたら幸いです。

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