前回の記事では、強い営業組織の文化をつくる際に役立つフレームワーク"5 Standards Model"の要素の1つである「接触面積」について解説しました。
詳しくは「強い営業組織の文化として必要な5つの要素 ~接触面積編~」をご参照ください。
本記事では、営業の質を高める2種類の「記録→計画→実行」サイクルと、5Sの要素の1つである「記録」について詳しく解説します。
「売上や受注数などは追っているが、プロセスKPIや活動の記録ができていない」
「記録が不十分で、効果的な営業戦略が立てられない」
といったお悩みをお持ちの経営者の方や営業責任者の方は、ぜひご一読ください。
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営業の質を高める2種類の「記録→計画→実行」サイクル
再現性が高く、強い営業組織をつくるためには、前回の記事でご紹介したような営業の量だけではなく、営業の質を高める必要があります。
営業の質を高めるための方法として、次の2つの改善サイクルがあります。
①資産化サイクル
②KPIサイクル
それでは、①・②について詳しく見ていきましょう。
資産化サイクル
「資産化サイクル」とは、記録したデータを活用してアクションを実行し、売上につなげるサイクルのことです。
このサイクルにおいて記録しておくべきデータは、業種、従業員規模、役職や決裁者かどうかという情報、趣味などのお客様に関する情報と、失注理由やニーズ、予算などの案件に関する情報になります。
例えば、自社の商品が国の新たな補助金制度の適用対象になることがわかった”ある企業”では、営業推進の人が会計士と組んで「自社の商品を買うと今ならこういう手順で補助金が出ます」というスキームを作ってから営業がお客様に提案しに行ったそうです。
購入後に補助金を申請すれば、お客様はその企業の製品を通常の価格よりも安く購入することができますので、お客様に自社の商品を購入していただける可能性が高くなります。
その企業にとって、チャンスでした。
そのような計画を立て、アクションを実行するために、過去の案件で失注理由に予算ネックと入っていたものを全部出してきてリスト化し、ひたすら電話でアポをとったそうです。
この取り組みによって、その企業は一時期爆発的に売上を伸ばすことに成功しました。
また、食品への異物混入事件のニュースが出た次の日には、自分のテリトリーの中で食品を扱う会社を調べて電話し、アポをとって売りに行ったと聞きました。
当初、お客様にとても驚かれたそうですが、すぐに「今だったら社長呼べるよ」と言ってもらえ、その時期は食品系の会社の売上が伸びたそうです。
以上のことから、日頃からしっかりと記録を残していれば営業の質が上がり、売上につなげることができることがわかります。
KPIサイクル
「KPIサイクル」とは、営業活動や案件情報をKPI化することによって何かしら示唆を得て、営業活動を改善するサイクルのことです。
売上というKGI(最重要指標)を達成するために、単価や受注数、案件数、アポ数のようなKPIを多くの営業組織が置いています。
それらのKPIを達成するために、営業は適切なアクションをとる必要があります。
例えば、「アポ数」というKPIの数を増やしたい場合、その前のアクションとして架電数を増やしたり、取引先担当者に別のお客様を紹介してもらったりすると思います。
このようなKPIを達成するためのアクションに関する情報をすべてログに残していくことで、それらをKPI化することができます。
KPIを達成するためのアクションをKPI化できれば、他の人との差や社内における自分の位置を確認することができます。
さらに、それぞれのKPIに目標値を置くことで、目標値(想定値)に対して自分はどこが弱いのか、売れている人がなぜ売れているのかといった要因を分析することができ、他の人から学ぶこともできます。
“ある企業”で「ペア率」というKPIを置くことで、売上を上げることに成功した事例をご紹介したいと思います。
「ペア率」とは、先方の決裁者と実際にサービスを使う現場の担当者の両方が同席している面談(ペア面談、またはペア商談と言う)をどれだけできたかを測るKPIです。
この企業が分析をした結果、ペア面談をやっている方が受注単価が高いということが分かりました。
やはり、現場の方が面談の場で「この機能すごい」など言っている姿を目にすると、決裁者の方は「このサービスを入れた方がいいのかな」という気持ちになり、決断しやすいのだと思います。
加えて、現場の担当者がわざわざ稟議をあげて決裁者に説明する手間を省くこともできます。
その結果、受注単価が1.1倍になったそうです。
この「ペア率」というKPIは、とても有効だと思います。
5 Standards Modelにおける"記録"とは
概要
前章で営業の質を高める2つのサイクルをご紹介しましたが、これらをうまく回すためには5 Standards Modelの「記録」「計画」「実行」の水準を高める必要があります。
本章では「記録」について説明していきます。
5 Standards Modelにおける「記録」は、顧客の会社情報や担当者情報、部署情報などの顧客情報と、案件情報や面談情報、TELの内容などの営業活動の情報を改善に活かせる状態で残すことを指します。
顧客情報は売上につながるとても重要な情報で、蓄積していくことによって会社の資産になります。
一方、営業活動の情報は蓄積していくことで、売れている人の売れている理由がKPI単位で把握でき、それを他の人が再現することができます。
どちらもネクストアクションの精度や営業戦略の質を高めるために使うことができるので、しっかりと残していきましょう。
では、記録が高い水準で出来ている状態とは、どのような状態なのでしょうか。
それは次の3つの軸で判断することができます。
①量
②粒度
③精度
「記録」における”量”とは、記録のレコード数や項目に残せている記録の量です。
営業活動を改善するために記録したデータを分析する際、サンプル数が少ないと正確な分析結果を出すことが難しいので、より多くの顧客・営業活動に関する情報を収集・蓄積していく必要があります。
②の”粒度”は記録の細かさのことで、面談の開始時間を15分単位で残すのか1分単位で残すのか、リードソースを経路まで残すのか等です。
1回の訪問につき、20~30くらいの項目を入力する企業もあります。
最後の”精度”は、どれだけ事実ベースで記録できているかです。
嘘や事実ではないことが記録されていると、分析や計画をする際に精度が大きく下がってしまうので、注意しましょう。
事例
「記録」の水準が高い”ある企業”では、フィールドセールスの訪問について分刻みで面談時間を記入したり、会社名・役職・名前・メールアドレス・電話番号・その他担当者に紐づく多くの情報を記入する必要があると聞いています。
加えて、面談時の同席人数や受注できそうか、どの商品をPRしたか等も、ログに残しているそうです。
特に、過去にお客様にPRした商品の情報を残しておくことで、そのれによって何%受注につながったのかを分析できたり、過去にその商品を見てくれているということは当時のこの機能だと売れなかったけれど、新しくなったから売れるはずだといったように、資産化サイクル・KPIサイクルのどちらでも使うことができます。
また、お客様が購入にいたらなかった場合も、金額ネックだったのか、タイミングがネックなのか、それとも当たる人が悪かった決裁者ネックだったのかなど、その要因まで書いておくことで、ネクストアクションが分かりやすくなります。
実は、2-1.で紹介した事例と同じ企業なのですが、この企業は日頃からお客様となる企業の多くの情報を粒度高く収集・蓄積していたので、異物混入事件や補助金のときのように何かあったときにすぐに動くことができるのだと思います。
この企業では記録の精度を徹底するために、記入漏れの項目があると注意され、評価が下がってしまいますし、リアルタイムに入力していかないと最悪の場合、虚偽と見なされてしまいます。
企業訪問から帰ってきてからその日の情報をまとめて入力といったことができないそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では営業の質を高める2種類の「記録→計画→実行」サイクルと、5Sの要素の1つである「記録」について解説しました。
再現性が高く、強い営業組織をつくるためには、①・②のサイクルで営業の質を高める必要があります。
①資産化サイクル
②KPIサイクル
さらに、そのサイクルをうまく回すためには「記録」「計画」「実行」の水準を高めることが重要です。
5 Standards Modelにおける「記録」とは顧客・営業活動の情報を改善に活かせる状態で残すことで、記録が高い水準でできているかどうかは、次の3つの軸で判断することができます。
- 量
- 粒度
- 精度
適切に「記録」することで、ネクストアクションの精度や営業戦略の質を高めることができるので面倒でもしっかり残し、データを蓄積していきましょう。
次の記事では5 Standards Modelの要素の1つである「計画」について詳しく解説します。
ご興味のある方は是非ご覧ください。
次の記事はこちら。
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